鼠経ヘルニアとは、加齢とともに鼠径部の筋肉が弱くなり足の付け根の部分(鼠経部)に腸が脱出する病気です。時に陥頓(腸が穴にはまり込んで壊死を起こす)をきたす場合があるため、手術が必要となります。
(前方アプローチ):鼠経部の皮膚を4~5cm程度切開し、脆弱部(ヘルニア門)に人工物(ポリプロレン製のメッシュ)を留置します。ヘルニア門周辺の剥離の程度や、使用するメッシュの違いで、メッシュ・プラグ法、クーゲルパッチ法などの術式があります。
(TAPP手術:腹腔鏡手術):腹腔鏡を使用しお腹の中から腹膜を切開しメッシュを留置します。前方アプローチでの手術に比べると、術後の痛みが少ない、メッシュ挿入の違和感がほとんどないなどの利点があります。
前方アプローチ
(メッシュプラグ法/クーゲルパッチ法)
の皮膚切開創
TAPP法(腹腔鏡)
の皮膚切開創
胆石症とは、胆嚢内に結石ができると、上腹部痛・背部痛などの胆石発作を起こしたり、結石が総胆管に落下して黄疸や急性膵炎、急性胆管炎を併発すると命に関わる事があるため、症状のある胆石は手術が必要となります。
(開腹手術):急性胆嚢炎で胆管周辺の炎症が強い場合や、以前の開腹手術で胆嚢周辺の癒着が強いと判断される場合は、右季肋部(肋骨弓のやや下)に約10~15cmの切開を置き開腹で胆嚢を摘出します。
(腹腔鏡手術):お臍に12mmのカメラ用ポート、季肋部に3mm~12mmのポートを3つ挿入して胆嚢を摘出します。術前に胆嚢周辺の炎症が少ないと判断される場合はお臍に3cm程度の切開を加えるのみで手術を行う単孔式手術も適応となります。術後問題がなければ、3~4日で退院となります。
鉗子で胆嚢を持ち上げたところ
胆嚢管(胆嚢の根本の管)を切除するところ
開腹での皮膚切開創
一般的な胆石腹腔鏡の皮膚切開創
虫垂炎の状況により若干の変更がありますが、当科ではお臍に約2.5cmの切開を置いて、そこから鉗子とカメラ用のポートを挿入した後、左下腹部に3~5mmのポートを1個挿入して虫垂を切徐する腹腔鏡手術を行っています。炎症が軽い場合はお臍のみを切開する単孔式の手術も可能となります。開腹手術に比べ、創が小さく、創感染も起こりにくいという利点があります。
2018年発行の胃がん治療ガイドライン(第5版)には、『幽門側胃切除術(胃の十二指腸よりの約2/3切除)が適応となるステージI期の症例で腹腔鏡下手術は選択肢となりうる』と位置付けられており、当科においても内視鏡(胃カメラ)手術が適応とならない早期胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術(LADG)を施行しています。
お臍以外の上腹部に4個の5~12mmのポートを挿入し、胃切除と周辺リンパ節を郭清した後、お臍の創を約3.5~4cm追加切除し胃を取り出します。臓器の切除範囲は開腹手術と腹腔鏡手術では変わりありません。腹腔鏡下手術では、手術中、他の臓器(小腸など)に与える影響が少ないために手術後の回復が早いといわれており、早期の社会復帰ができることなどが利点です。
腫瘍が大きく他臓器に浸潤している、腫瘍が大腸の漿膜を越えて露出している、広範囲にリンパ節転移が認められる大腸がんに対しては開腹手術をお勧めしておりますが、その他の盲腸から直腸までの大腸がんに対しては腹腔鏡手術(LAC) が可能です。
大腸がんの場所(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)により若干の違いがありますが、お臍以外の上下腹部に4個の5~12mmのポートを挿入し、大腸切除と周辺リンパ節を郭清した後、お臍の創を約3.5~4cm追加切除し標本を取り出します。臓器の切除範囲は開腹手術と腹腔鏡手術では変わりありません。腹腔鏡下手術では、手術中、他の臓器(小腸など)に与える影響が少ないために手術後の回復が早いといわれており、早期の社会復帰ができることなどが利点です。