角膜とはいわゆる「くろめ」の表面の透明な組織で、眼球において、透明なレンズとして、また眼球を守る壁としての役割があります。
この角膜の働きが損われ、薬物などの内科的治療では治すことができない場合に角膜移植の適応となります。
角膜の働きが損なわれた場合ですから、具体的には
となります。
水疱性角膜症
角膜炎後の角膜混濁
円錐角膜
角膜変性症
角膜穿孔
など
角膜はおおきく、上皮層、実質層、内皮層の3層構造をしています。
3層すべてを移植するのが「全層角膜移植術」、内皮層のみを移植するのが「角膜内皮移植術」です。
現在最も多く行われているのは、内皮層のみを移植する「角膜内皮移植術」で、拒絶反応が出にくいなどの利点があります。ただし、角膜穿孔や円錐角膜、晩期の水疱性角膜症など、内皮移植では角膜の機能回復が期待できない場合は「全層角膜移植術」を行います。
内皮移植では、提供者からの内皮層だけを、病気の角膜に接着させる手術になります。空気をいれて圧着させるため、術後は3時間ほどの仰向き安静が必要となります。
全層移植では、病気の角膜を円形に切除し、提供眼からほぼ同じサイズの角膜片を作成して、角膜片を細いナイロン糸で縫いつけます。
手術時間は約2~3時間です。
原則、全身麻酔で行います。
白内障がある場合、角膜移植と同時に白内障手術を行う場合があります。
確率は非常に稀ですが、術中の眼圧変動が原因で眼内出血がおこる可能性があります。もし万が一出血がおこった場合には追加処置が必要になり、視力改善が困難な可能性があります。
すべての眼手術に感染症の危険性があります。術前、術後に抗生剤の投与し、厳重な監視をします。
角膜移植の術後に視力はゆっくりと改善していきます。術後は多少の角膜乱視が生じます。縫合糸の抜糸などで乱視の矯正が必要になる場合があります。
角膜移植は臓器移植ですから、拒絶反応が起こりえます。角膜移植の場合、拒絶反応をおこす可能性は低いといわれており、成功率は90%以上ですが、拒絶反応をさけるための点眼薬は術後ずっと必要になります。拒絶反応を起こした場合は内科的な治療が必要になります。
内皮移植の場合には、拒絶反応などにより接着不良が起こることがあります。その場合には、接着させるための再手術が必要となります。
術中、術後に眼圧上昇が起こることがあります。緑内障の発症または進行を生じる可能性があるため、眼圧のコントロールが必要です。
角膜移植術後は細菌や真菌などによる感染をおこしやすいため、抗生剤の点眼薬もずっと必要になります。
移植術後は物理的な外力に対しても、手術前よりも脆弱ですので、打撲や転倒などにも注意が必要です。
移植角膜にもいつか寿命が訪れます。移植角膜の長期生存のためにも、定期的な眼科通院が必要です。
移植に使用される角膜(ドナー角膜)は、国内提供眼の場合、アイバンクを通じて、亡くなられた方もしくは脳死判定を受けられた方から得られます。しかし、現況では国内提供ドナー角膜数は少なく、手術を希望されておられる方には長期間手術を待っていただいている状況です。また手術の予定も直前にならなければたてられません。
そこで当院では、米国アイバンクの協力のもと、海外ドナー角膜としてアメリカから角膜を空輸し、角膜移植に使用しています。設定した手術日にあわせてドナー角膜が到着しますので、予定手術が可能です。海外ドナーも国内ドナーと同様に、事前に厳格な検査を受けたものであり、国内ドナーと遜色ない安全なものです。
費用等のご相談と質問は、総合受付でお伺いさせて頂きます。
その他不明な点がございましたらいつでもご質問ください。