硝子体は、眼球の水晶体より奥を占める透明なゼリー状の組織です。加齢や疾患によって変質し、網膜を引っ張る、出血で透明性が損なわれる、などして目の障害を引き起こします。
この変質してしまった硝子体を除去する手術が硝子体手術です。同時に網膜に起こった病気にも治療を加えます。
ベッドに仰向けになり、消毒の後、清潔なカバーを顔にかけて行います。
基本的には局所麻酔で行います。
硝子体手術では、まず白目の部分に手術機器を挿入する小さな穴を下記のように3ヶ所あけます。
術中に眼球の形態を保つための灌流液を入れるためのもの
眼内を照らす照明を入れるためのもの
硝子体を切除するカッターなどを入れるためのもの
濁った硝子体を切除し、疾患によって網膜に追加操作を行います。
濁った硝子体はカッターといわれる装置で切除しますが、必要に応じて、眼内染色液を使用します。網膜への手術操作には、網膜上の膜除去、レーザー凝固などがあります。
疾患や眼内の状況に応じて、空気やガス、シリコンオイルなどを眼内に入れる場合があります。
術後うつむきの姿勢が必要となります。空気は1週間程度で眼内の水に置き換わります。シリコンオイルは、より重症例に使用され、眼内の状態が落ち着いたら再手術により除去します。
なお、硝子体手術をおこなうと白内障が急速に進行します。白内障手術を同時に行うと、硝子体手術がより安全・確実に行えるという長所があるので、ほとんどの場合で白内障手術を同時に行います。
当院では、27ゲージというわずか0.4mmの小切開創での硝子体手術システムも採用しております。
裂孔原性網膜剥離
目の奥の網膜というカメラのフィルムに相当する神経の膜組織があります。硝子体の牽引などで網膜に穴が開いて剥がれてしまい、視野と視力障害を引き起こす病気です。放置すると失明に至ります。
糖尿病網膜症
糖尿病の合併症の1つで網膜の毛細血管が閉塞して血のめぐりが悪くなり、硝子体の出血や黄斑部のむくみ、さらに進行すると網膜剥離を引き起して大きく視力が低下します。
黄斑前膜 (黄斑上膜)
眼底の中心にある黄斑部の網膜に膜が張る病気です。物がゆがんで見えたり、物が大きく見えたり、やがては視力が低下してくる病気です。
黄斑円孔
眼底の中心にある黄斑部の網膜に穴があく病気です。黄斑部は、物を見るための中心部分であるため、黄斑円孔になるとつよい歪みがおこり、視力も低下します。
硝子体出血
網膜の血管などが切れて出血し、硝子体腔に出血が溜まった状態を硝子体出血と言います。 光が網膜までうまく届かなくなり、視力障害を引き起します。糖尿病網膜症、網膜静脈分閉塞症、裂孔原性網膜剥離、加齢黄斑変性などが原因です。
など
硝子体手術をおこなうと白内障の急速な進行が認められます。
また、白内障手術を同時に行うことによって硝子体手術が安全、確実にできるという長所もあります。
このような理由よりほとんどの症例で硝子体手術と白内障手術を同時に行います。
多くの場合人工レンズを挿入しますが、症例によっては再手術で後日人工レンズを挿入します。
術前、術後の抗生剤の使用、術中の消毒と可能な限りの対応をしていますが手術の創より眼表面等の病原菌がはいり、眼内感染を起こす可能性があります(約0.1%)。
眼内感染がおこった場合、再手術、抗生剤の投与をおこないますが視力予後は不良です。
眼内の血管が破綻をおこして大出血をおこす稀な合併症です。
すべての眼科手術で起こる可能性があります。
眼内操作や術後の硝子体収縮により新たな網膜裂孔、剥離が生じる可能があります。
多くの場合再手術を必要とします。
術後、眼内に形成された膜によって網膜剥離が生じる難治性の合併症です。
長期間放置された眼疾患や若年者の術後に起こりやすい傾向があります。
糖尿病網膜症の術後などに生じた新生血管が眼内の排水を妨げて眼圧が上昇して緑内障へ進行する難治性の疾患です。
術後に眼圧が上昇する合併症です。
ほとんどの場合、経過観察あるいは点眼剤の使用によって改善しますが、長期間、点眼剤を使用しなければならない場合もあります。
術後、眼内で出血が生じることがあります。
糖尿病網膜症の術後では頻発します。
多くの場合2週間以内で改善しますが、再手術が必要な場合もあります。
眼の表面に手術による傷が残ります。
数ヶ月で目立たなくなりますが、充血し易くなり、違和感が残ることがあります。
手術終了時に眼内にガスやシリコンオイルをいれた場合はその浮力で網膜の復位をうながすために術後約一週間は下向きで安静を維持する必要があります。
経過が良好な場合は約10日間の入院になります。
ガスなどをいれない場合、経過良好ならば術後3日目以降に退院可能です。
疾患によって視力回復の経過は異なりますが網膜中心部に障害をうけた眼疾患ではものがゆがんで見える症状が残る場合があります。
術直後に視力が悪くとも術後半年程は視力の回復が期待できます。
退院直後より家事、外出などは可能です。
仕事の復帰、旅行、運動等の詳細については主治医とご相談ください。
術後の点眼薬は約一ヶ月間ほど続ける必要があります。