通常眼内レンズ(単焦点)を用いた白内障手術では、遠くにピントを合わせた場合は手元用、手元にピントを合わせた場合は遠方用の眼鏡が必要となります(図1)。多焦点眼内レンズを使用すると、眼鏡を使用する頻度を大幅に減らすことが出来ます(図2)。
1987年 | 屈折型多焦点眼内レンズの報告(Keatesら) |
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1989年 | 回折型多焦点眼内レンズの報告(van Oye) |
2002年 | 屈折型多焦点眼内レンズが本邦で発売される。 |
2008年 | 回折型多焦点眼内レンズが本邦で発売される。 |
2008年 | 多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が先進医療の認定を受ける。 |
2018年 | 拡張焦点型多焦点眼内レンズが本邦で発売される。 |
多焦点眼内レンズは大きく分けて屈折型、回折型、拡張焦点型の3種類があります。
屈折型(図3) は中央から遠用、近用、遠用の順に屈折度数の配置を変化させています。瞳孔径が確保されていれば良好な視力が得られる一方、ハロ・グレア(図4) が出易い事が欠点となります。
回折型(図5) は回折現象(波動が障害物のある所を通過する際に障害物の背後などに回り込む現象)を用いたレンズで、ハロ・グレアは軽減された一方でコントラスト感度の低下(図6)が問題となっています。
拡張焦点型 は回折構造を改良する事で、ハロ・グレアのみならずコントラスト感度の低下を抑制する事に成功しています。当院では現在、拡張焦点型多焦点眼内レンズを使用しています。
どのレンズも長所と短所があり、多焦点眼内レンズを検討される場合は担当医師とよく相談される事をお勧めします。
表:眼内レンズの種類と特徴
屈折型 | 回折型 | 拡張焦点型 | |
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コントラスト感度 | 明所では良好 | 低下する | 低下は軽度 |
ハロ・グレア | 発生しやすい | 少し発生する | 発生しにくい |
加入度数 | +3.0D | +2.5D、+3.0D、+4.0D | +1.75D |
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