渡航用予防接種の基本原則と注意

渡航用予防接種の基本原則と注意

  • 1.

    予防接種には、定期接種(予防接種法に基づき市町村長の責任で実施、万一事故が起こっても国が全面的に補償します)と任意接種(わが国で接種できる予防接種で定期期間以外に接種する場合)があります。
    渡航ワクチンはすべてが後者の任意接種であり、予防接種費用、抗体検査費用などが、自費であり、健康保険による支払は一部の例外を除きありません(例えば、犬咬傷の破傷風ワクチン、摘脾者に対する肺炎球菌ワクチンなど)。

  • 2.

    万一健康被害が生じた場合、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構による救済制度がありますが、定期接種のように国による補償制度はありません。
    わが国のワクチンは国により検定され、毎年、副作用の少ないものに改良が加えられております。
    皮下硬結、一過性発熱、関節痛、発疹等の軽微な副作用は見られますが、重篤な副作用は非常にまれです。

  • 3.

    ワクチンには、不活化ワクチンと生ワクチンの2種類があります。
    不活化ワクチンの同時接種については、外国では常識ではありますが、日本でも1994年8月の厚生労働省保健医療局長通知により可能になりました。

  • 4.

    ワクチンには、禁忌事項があります。例えば、妊婦では、生ワクチンの接種はできません。
    さらに、不活化ワクチンも、インフルエンザを除き、妊婦には原則接種しません。
    外国の施行規則と一部異なりますが、当院では、原則、日本での勧告に従い接種を行います。

  • 5.

    投与スケジュールですが、不活化ワクチンは1週間の間隔で次々接種可能です(コレラワクチン後、黄熱ワクチンを投与する場合3週間の間隔が必要です)。
    但し、生ワクチンを接種すると、1ヶ月間、他のワクチン(不活化ワクチンと生ワクチンとも)の接種が出来ません。
    又、不活化ワクチンの副作用は接種当日から数日以内ですが、生ワクチンの関節炎や発疹は接種後10日から2週間にみられるため、出発直前の予防接種は勧められません。

  • 6.

    初診でワクチン外来を受診する場合、母子手帳や過去の予防接種証明書(特に米国留学経験者は、学校入学に際し、証明書の提出が必要である)などを持参し、必要なワクチンの種類を判断することも、不必要なワクチン接種を避けるために重要です。

  • 7.

    接種方式が日本のワクチンと同じものは、日本と海外で異なる会社の製品で接種を継続することに問題はありません。
    しかし、新しい混合ワクチンや接種方式の異なるA型やB型肝炎のワクチンでは、判断が難しい場合もあります。
    パーフェクトな回答はありませんが、医師と相談して判断を仰いでください。